未成年者の法律行為 その1
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未成年者Aは、単独の法定代理人である母親Bの所有する宝石を、Bに無断で自己の物としてCに売却し、引き渡した上、代金50万円のうち30万円を受け取り、そのうち、10万円を遊興費として消費してしまった。他方、Cは、Aに対し、残代金を支払わない。この場合における法律関係に関する次の記述中、正しいものはいくつあるか。
- Aが未成年であることを理由にA・C間の売買を取り消したとしても、Cが、Aを宝石の所有者であることを信じ、かつ、そう信ずるについて過失がなかったときは、Aは、Cに対し、宝石の返還を請求することができない。
- Bは、A・C間の売買が取り消されない限り、Cに対し、所有権に基づき宝石の返還を請求することができない。
- Aが、未成年者であることを理由にA・C間の売買を取消した場合には、Aは、Cに対し、20万円を返還すれば足りる。
- Aは、成年に達した後は、未成年者であったことを理由にA・C間の売買を取消すことはできない。
- Aが、Bの同意を得て、Cに対して代金残額20万円の履行請求をした場合には、Aは、未成年者であることを理由にA・C間の売買を取消すことはできない。
【司法書士試験 平成6年出題(肢はア~オを1~5に変えています)】
解説
- 肢1は、即時取得(192条)の場面であることが分かれば、まずはOKだと思います。
即時取得が成立すれば、AはCに対し返還請求をなし得ないが、そうでなければ、返還請求が可能になってきます。
即時取得の要件を検討した場合、そのひとつに「有効な取引行為が存在すること」が挙げられますが、肢1ではAは未成年であることを理由に当該売買契約を取り消したとあります。
つまり、この売買契約は有効な法律行為ではないことになり、即時取得の成立もなりません。
よって、Aは、Cに対し、宝石の返還を請求することができるため、肢1は「×」です。 - Bは、AがCに譲り渡した宝石は、そもそもAの母親Bのものです。所有権者はBであるから、AC間の売買契約は他人物売買(560条)になります。
無権利者であるAから宝石を譲り受けたCもまたこの宝石については無権利者です。この宝石の所有権者はいぜんBのままなので、所有権に基づいた返還請求権を行使することが可能です。
つまり、Bは取り消さずともCに対して所有権に基づく返還請求はできます。よって、肢2は「×」です。 - AC間の売買を未成年であることを理由に取消した場合(5条2項)、AC間の売買契約は遡及的無効になります(121条)が、その場合、未成年者側は現存利益の返還で足りるということになっています(同条但書)。
Aは、30万円受け取り、そのうちの10万円を遊興費として使ってしまいました。この10万円が現存利益にあたるか否かが問題となりますが、判例では、生活費等は現存利益があると言えるが、遊興費のようなものには現存利益がないとしています。
Aが浪費した10万円には現存利益がないといえ、残金の20万円には現存利益があると言えます。
つまり、AはCに対して20万円を返還すれば足ります。よって、肢3は「○」です。 - 取消権は、追認をすることができる時から5年間、行為の時から20年間行使しないと消滅時効にかかってしまいますが(126条)、この場合、Aが自らの行為を追認できるときは、Aが成年したときです。つまり、Aが取消権を失うのは、早くても成年になってから5年間経過したときですから、成年になったから取消権が消滅するとかそういう話ではありません。よって、肢4は「×」。
- 「Aが、Bの同意を得て、Cに対して代金残額20万円の履行請求をした」ということは、125条(法定追認)の2号にあたります。
法定代理人の追認とは、いわば、取消権の放棄、取消し得る行為を有効に確定する行為ですから、AC間の売買契約は有効に確定したと言えます。こうなっては、もはや取消権の行使はできません。よって、肢5は「○」です。
メモ
この問題は、司法書士試験のもので、行政書士試験の問題としたら若干難しめかもしれませんが、だからといって、行政書士試験で同様の問題が出題されても特別不思議ではありません。
出題の論点的には、制限能力者の部分では重要なものですので、押さえておきたいものです。
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2011年5月15日 | コメント/トラックバック(0) |
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